後年度負担

こうねんどふたん

Future Obligation

庁舎と公共施設の模型の前で、契約書と年度ごとの支払計画を確認する机上のイラスト

後年度負担とは

後年度負担は、複数年度に及ぶ契約に基づき、契約した翌年度以降に支払う経費です。たとえば今年12億円の契約を結び、今年3億円、翌年4億円、翌々年5億円を支払うなら、今年の契約による後年度負担は9億円です。

予算を読むときは、今年いくら支払うか、今年いくら契約するか、翌年度以降にいくら支払いが残るかを分けて考えます。後年度負担は、今年の歳出予算や国債発行額と同じ数字ではありません。

防衛予算では艦船・航空機の調達、施設の建設など、契約から納入までに複数年度を要する事業に関係します。公共事業にも複数年度の契約を可能にする仕組みがありますが、以下の経費名や実際の金額は防衛予算の分類に沿ったものです。

契約する権限と、実際に支払う予算は別

国が将来の年度にも支払いを伴う契約を結ぶ際には、国庫債務負担行為という予算形式で、将来にわたって債務を負う上限額などについて国会の議決を受けます。これは債務を負う権限であり、それだけで現金を支出できる権限ではありません。

支払う年度には、その支払いに必要な経費を歳出予算に計上します。防衛予算で、過去の年度の契約に基づいて当年度に支払う分を歳出化経費、当年度の契約に基づいて当年度に支払う分を一般物件費と呼びます。

財政法上、国庫債務負担行為による支出の年限は、原則として当該会計年度以降5か年度以内です。国会議決による延長や法律上の例外もあり、すべての契約が必ず5年間という意味ではありません。

12億円の契約でも、今年の支出が12億円とは限らない

2026年度に12億円の新しい契約を結び、3億円・4億円・5億円と3年度に分けて支払うと仮定します。さらに過去の別契約に基づく支払いが2026年度に2億円だけある場合、この2契約の関係は次のようになります。

契約した年度と、支払う年度を交差させる

どの契約か2026年度に払う2027年度に払う2028年度に払う
2025年度以前の契約2億円歳出化経費支払いなし支払いなし
2026年度の新契約
総額12億円
3億円一般物件費4億円契約翌年度の支払い5億円契約翌々年度の支払い
2026年度に支払う額
5億円 = 過去の契約2 + 新契約3
2026年度に結ぶ契約額
12億円 = 3 + 4 + 5
2026年度の新規後年度負担
9億円 = 翌年度4 + 翌々年度5
金額・支払時期は仮定で、この2契約だけの比較です。2026年度から見た4億円・5億円は後年度負担ですが、実際に支払う2027・2028年度には、それぞれの年度の歳出化経費になります。

新契約について2027年度に4億円を支払えば、その契約の未払予定分は9億円から5億円へ減り、2028年度に残り5億円を支払えばゼロになります。当年度の支出と契約額を足すと、同じ支払いを重複して数える部分が生じます。

2026年度予算では新規6兆3,808億円、既定分を含め16兆8,274億円

防衛省の「令和8年度予算の概要」と2026年版防衛白書では、次の金額が示されています。予算上の金額であり、2026年10月時点の支払実績や決算ではありません。

2026年度の公表値(単位:億円)
区分金額何を表すか
一般物件費18,7982026年度の契約に基づき、2026年度に支払う分
歳出化経費45,3982025年度以前の契約に基づき、2026年度に支払う分
物件費・歳出ベース64,196一般物件費と歳出化経費の合計
新規後年度負担63,8082026年度の契約に基づき、2027年度以降に支払う分
物件費・契約ベース82,6072026年度の契約額。一般物件費と新規後年度負担からなる
後年度負担の既定分104,4662025年度以前の契約に基づき、2027年度以降に支払う分
既定分+新規後年度負担168,2742027年度以降の支払予定分の合計

防衛省の2026年度予算資料・2026年版防衛白書を2026年10月24日確認。SACO関係経費および米軍再編関係経費のうち地元負担軽減分に係る経費を除く範囲です。計数は四捨五入により、内訳と合計が一致しない場合があります。

歳出ベースの物件費は、18,798+45,398=64,196億円です。一方、将来分の合計は104,466+63,808=168,274億円で、「今年新たに約16.8兆円を契約した」という意味ではありません。以前の契約から残る分も含まれています。

契約ベースは、公表された内訳を足すと18,798+63,808=82,606億円ですが、公表合計は82,607億円です。1億円の差があります。資料は、四捨五入で内訳の計と公表合計が一致しない場合があるとしています。

新規後年度負担・既定分・歳出化経費・国債の違い

どの年度の契約・支払いを見るか
用語見る対象読み違えやすい点
新規後年度負担今年の契約による、翌年度以降の支払い今年の支出額ではない
後年度負担の既定分以前の契約による、翌年度以降の支払い今年支払う歳出化経費とは別
歳出化経費以前の契約による、今年の支払い今年に新しく結ぶ契約額ではない
国債国が債券を発行して行う資金調達契約代金の支払時期を表す後年度負担とは軸が異なる

「兵器ローン」は、防衛装備品などの将来の支払いを指して報道で使われることがある表現です。後年度負担には施設建設なども含まれ、銀行から利息付きで借り入れた額を、そのまま集計したものではありません。借入れ・国債発行という資金調達と、契約に基づく将来の支払いを区別します。

将来の予算への影響を読む3つの確認点

  1. 金額の種類と対象年度をそろえる。歳出額、新規契約額、後年度負担の合計はそれぞれ役割が異なります。当初予算・補正予算・決算も区別します。
  2. 新規分と既定分を分ける。新しい契約を抑えても、過去の契約に基づく支払いが当年度の歳出に残ることがあります。年ごとの支払予定を確認します。
  3. 契約を分ける理由と将来の支払余力を見る。製造・建設に数年かかる事業では複数年度契約が必要になる一方、翌年度以降の予算に支払いが残ります。今年の支出額が小さいことだけで負担が軽いとは判断できません。

同じ対象・基準時点なら、前から残る将来支払分に新しい将来支払分が加わり、支払いが進むと残額は減ります。残高の増減を読む際には、支払いや契約条件の変更等も含む同じ範囲の資料を使い、ある年度の新規分だけで全体を説明しないようにします。

後年度負担についてよくある疑問

後年度負担は今年の予算に上乗せして払うお金ですか?
当年度から見た翌年度以降の支払予定です。今年の歳出に単純に足すものではありません。過去の契約のうち今年支払う部分は、歳出化経費として今年の歳出に入ります。
後年度負担が16兆8,274億円なら、今年の新規契約もその額ですか?
違います。2026年度の公表値では、2027年度以降に支払う既定分10兆4,466億円と新規分6兆3,808億円の合計です。2026年度の物件費の契約ベースは8兆2,607億円です。
「兵器ローン」は銀行借入れや国債と同じですか?
後年度負担を指す文脈では、複数年度契約による将来の支払約束を表す通称です。銀行融資や国債発行による資金調達そのものとは区別します。対象には装備品のほか施設建設などもあります。
後年度負担は、後の年度にどう変わりますか?
支払いが進むと、その契約の将来支払残額は減ります。12億円を3・4・5億円と払う仮定では、初年度の後年度負担は9億円、翌年度に4億円を払った後は5億円です。支払う年度には歳出化経費になります。
カテゴリ
関連用語
  • 財政政策政府の税・支出・資金調達と予算の関係を理解する
  • 財政収支一定期間の収入と支出の差と、将来支払額を区別する
  • 国債国の資金調達と、契約による支払約束の違いを確認する