非関税措置(NTM)

ひかんぜいそち

Non-tariff measures

港で輸入農産物と工業部品を検査するための書類と拡大鏡

非関税措置とは

非関税措置は、通常の関税以外で、国際的な物品取引の数量や価格に影響を与え得る政策措置です。英語のNon-tariff measuresを略してNTM、複数形ではNTMsと呼びます。輸入数量の制限だけでなく、食品の安全基準、植物検疫、製品の規格や表示の条件なども含まれます。

関税は税の負担を決めます。一方、検疫や規格は「どの条件を満たせば、その商品を輸入・販売できるか」に関わります。関税率が0%でも、必要な検査や証明がなくなるとは限りません。

検疫・規格・数量制限は何を変えるか

衛生植物検疫措置(SPS)
食品に由来する健康上の危険や、動植物の病気・病害虫などへの対策です。例えば、輸入植物に付着する病害虫の侵入を防ぐ検査や処理は、植物検疫に当たります。病害虫のリスクと科学的根拠が重要です。
貿易の技術的障害(TBT)に関わる措置
SPSの対象を除く、製品の技術規則、規格、適合性を確認する手続きなどです。例えば、製品の寸法や品質、表示の要求があります。同じ食品でも、病害虫対策と品質表示では、措置の目的や対象に応じて区分が異なります。
数量制限・輸入許可など
輸入できる数量や、許可を受けるための手続きを定めます。数量の上限と、一定量を超えると税率が上がる関税割当は、仕組みが異なります。対象品目と、どの条件が実際に制約になるかを確認します。

関税と輸入条件を別々に確認する

同じ輸入商品でも、確認する条件は二つ

税額の条件

  1. 課税価格と税率従価税の場合
  2. 関税額を計算課税価格 × 税率
  3. 負担する税額無税なら関税は0円

検疫・規格などの条件

  1. 品目・原産国
    用途
    適用する要求を特定
  2. 検査・証明・許可必要な要求を満たす
  3. 条件への適合手続きの時間や費用も確認
税率の引下げ ≠ 検疫や規格の撤廃税の負担と、商品の適合条件を併せて判断
税率が0%になっても、病害虫への対策や製品の安全条件は残ることがあります。

非関税措置と非関税障壁の違い

NTMは、措置の良し悪しや、貿易が増えるか減るかをあらかじめ決めない中立的な概念です。安全基準に合わせる費用が貿易を難しくする場合もあれば、商品の安全性への信頼が高まり、取引を後押しする場合もあります。

非関税障壁(NTB)は、国内産業を守る意図がある措置や、公的な目的を達成するために必要な程度を超えて貿易を制限する措置を指す場合があります。保護主義との関係を考えるときも、検疫や規格が存在するだけで不当な障壁と決めつけず、守る対象、科学的根拠、制限の程度、手続きの運用を確かめます。

関税がなくなっても残る費用の例

仮に、ある輸入商品の課税価格を100万円、従価税の税率を10%、検査・証明への対応費用を7万円とします。必要な輸入条件は満たす前提で、消費税やその他の費用を除いて比べます。

税率10%のとき
100万円 + 関税10万円 + 対応費用7万円
比較額は117万円
税率0%になったとき
100万円 + 関税0円 + 対応費用7万円
比較額は107万円

関税の10万円は減りますが、同じ検査・証明の要求が続くなら7万円の対応費用は残ります。要求を調べる時間、製品の仕様変更、試験、書類の作成、手続きの待ち時間も企業の負担になります。費用を小売価格に転嫁するか、企業が吸収するかで、消費者への影響は変わります。

実際の関税には価格に比例する従価税のほか、数量を基準にする従量税などもあり、税率や必要な手続きは商品ごとに異なります。

「輸入解禁」「規制緩和」のニュースで見る点

  • 何が変わるか:関税率、輸入の可否、検疫条件、製品規格、数量の上限は別の変更です。
  • どの商品か:品目、原産国、加工の有無、用途が違うと、同じ商品名でも条件が変わる場合があります。
  • どの段階か:要請、協議、リスク評価、条件の決定、適用開始を区別します。協議や説明会の開催だけで、輸入が認められたとは判断できません。
  • 何が残るか:新しい条件、証明書、検査、事業者が負担する時間と費用を確認します。

植物検疫では、病害虫の侵入・拡散リスクを科学的に評価し、適切な措置を検討します。税率の引下げと、病害虫への対策が不要になることは同じではありません。TPP・CPTPPなどの協定に関するニュースでも、関税の扱いと検疫・規格に関するルールを別々に読みます。

非関税措置についてよくある疑問

関税が0%なら、どの商品でも輸入できますか?
関税が無税であることだけでは、輸入の可否は決まりません。対象商品の検疫、規格、許可など、適用される条件も満たす必要があります。
検疫や安全基準は、すべて保護主義ですか?
すべてではありません。健康や安全、環境を守る目的の措置もNTMに含まれます。目的と根拠、必要な制限の程度、運用を見て判断します。
輸入に向けたリスク評価が公表されたら、解禁済みですか?
評価の公表と、輸入条件の決定・適用開始は別です。対象品目と用途、正式な決定、開始日、必要な証明や検査を確認します。
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